♫ ~【音楽に触れる】~おとみっくインタビュー

パフォーマンスバンクが開催する演奏会の最大の強みは、お客さまも一緒に楽しめる「参加型コンサート」が可能なこと。
しかし現在「参加型コンサート」を学べる場所はそう滅多にない。
そんな中、究極の助っ人「おとみっく」さんに私たちは出会った。
国内外の音楽ワークショップの手法を学び、いくつもの音楽ワークショップを開催してきた「おとみっく」さん
思い描く音楽とは。
音楽ワークショップをはじめたきっかけから、音楽に対する思い、そして10月に開催される「参加型コンサートの作り方ワークショップ」に向けての意気込みを語っていただいた。

プロフィール

 

 

坂本夏樹:秋田県出身。4 歳よりピアノを始める。東京音楽を経て同大学大学院鍵盤楽器研究領域修了。演奏技術の向上と共にロンドン、ポルトガルを始めとする様々な音楽教育、音楽ワークショップの手法を学ぶ。ピティナ・ピアノコンペティション全国決勝大会入選。秋田県青少年音楽コンクール第1位最優秀賞受賞。ペルージャ音楽祭マスタークラス修了、現在はピアニストとして活動する傍ら、東京文化会館ワークショップ・リーダー、東京音楽大学助手、幼稚園での音楽講師、発達障害をもつ子供たちへの療育、ピアノ講師として 0 歳から大人まで幅広い年齢に音楽を届けている。

 

 

 

 

 

桜井しおり: 3歳よりピアノを始める。桐朋学園大学音楽学部演奏学科ピアノ専攻を経て、同大学研究科卒業。仲道郁代氏に師事し、在学時より氏が行う音楽ワークショップのアシスタントとして全国各地で活動。横浜フレッシュコンクール金賞、審査員特別賞受賞。かながわ音楽コンクール特選など数々のコンクールに入賞。モーツァルテウム音楽大学夏期音楽アカデミー、ミュンヘン音楽大学夏季セミナー受講。現在はソロ、伴奏など演奏活動を広げる傍ら、音楽文化、教育の発展を目指し、音楽ワークショップのファシリテーターや東京文化会館主催のワークショップ・リーダーを務めている。一般財団法人地域創造おんかつサブコーディネーター。

 

 

 

 

 

結成のはじまり

(左:桜井さん、右:坂本さん)

坂本:結成は2012年の12月でした。出会った時はその時はお互い違う音大の学生でした。私は当時在学していた東京音楽大学に『ミュージック・コミュニケーション講座』という授業で「音楽ワークショップ」について学んでいました。その授業は夏休みに特別セミナーがあって、そちらに桐朋学園大学の学生だった桜井も参加してくれて出会ったのが始まりです。

桜井:私の方から坂本をナンパしたんです!😊東京音楽大学が主催した講座でしたので、基本的に東京音大の学生さんと、東京音楽大学と連携していた神戸女学院の学生さん、昭和音楽大学の学生さんが殆どで、桐朋の学生は誰もおらず、、、一人で行きました。

ーそもそもそのワークショップセミナーに参加しようと思われた理由は何だったんですか?

桜井:そうですね、、少し遡りますが、私は元々ワークショップにまっっったく興味もなかったんです(笑)

ーそうだったんですね!

桜井:というのも!桐朋学園大学は演奏家を育てる大学なので、音楽ワークショップに関連する情報がまったく入ってきませんでした。今はだいぶ様々なところへアンテナをはる大学になってきましたが、当時はかなり閉鎖的でした。しかし大学4年生の時に、ピアニストの仲道郁代さんに師事する機会を頂くことになりまして。仲道先生は、演奏活動以外にも全国各地さまざまな場所に出向いてアウトリーチ・ワークショップもされていて、そのお手伝いをさせて頂きました。このワークショップを体験して、自分が認識していた音楽というものの概念がことごとく崩れていったといいますか、、「人のすぐ隣にあるようなもっと近い存在でもっと大きい力を持っているものなんだな」と感じて、「これは面白いかもしれないぞ・・・」と思いました。

でも、どこで学べばいいのか分からず、一緒に学ぶ同士もいなかったため、その時はホントにやみくもに探してリサーチしまくりました笑
そんな時にヒットしたのが、先ほどのワークショップセミナーでした。

坂本:私は将来ピアニストというよりは、地元の秋田に帰ってピアノを教える仕事や、子供のためのコンサートなど音楽の魅力を伝える活動をしていきたいなと思っていて、ピアノ専攻の授業と並行してコンサートの企画制作を学んだり、ミュージック・コミュニケーション講座のような音楽ワークショップについての授業などを受けていました。
その中で、日本でワークショップの活動をされている方はもちろん、外国での取り組みを教わったり、アメリカ、ロンドンからの講師によるワークショップを沢山体験しました。その中でどんどんはまっていきましたね!ただ桜井と出会ったときは、まだそこまで強く関心があるというわけではなく…「こんなものもあるんだな~」程度でした😊

ーなるほど。ワークショップって今になって結構浸透してきたものですよね。

坂本:そうですね。私たちが出会ったのは5年以上前の話なので。その頃は学生で音楽ワークショップをやってるって人もいなかったですし、実施されている先生やアーティストの方も少なかったと思います。

桜井:ワークショップっていう意味が今、本当に多様化されていますよね。それこそ私たちの活動も、「音楽ワークショップ」と呼んでいますが、あくまでも「ワークショップ」という言葉の意味が近いので、使っています。

ーたしかに、様々な分野でワークショップ形式が取り入れられていますよね。おとみっくの初めてのワークショップはどういった内容だったんですか?

桜井:セミナーの際に、全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)さんから、ピティナ・ピアノステップ(ピアノを学習する人のための、アドバイスつき公開ステージ。全国各地で開催している)でワークショップをやりませんか?とお声がけ下さいました。
子供達が演奏を終えて講評を待っている「空き時間」に開催された12月に合わせてクリスマスをテーマに曲を作りました。

坂本:私はピアノを習っていて、音楽の知識のある人に向けてワークショップをするのは初めての経験でした!参加して下さったお子さん達は、普段楽譜を見てステージで演奏するような子たちばかりだったので、既存の曲ではなく自分たちで考えたリズムなどを使って演奏してもらう、という内容にしました。

これまでに学んできたこと

坂本:桜井に出会ってからは、一緒にマイケルスペンサーさんという、日本フィルのコミュニケーション・ディレクターでもある方から、ワークショップの手法を学びました。あとはポルトガルにカーザ・ダ・ムジカという音楽施設があるんですが、そちらのワークショップ・リーダによる東京文化会館主催のワークショップ・リーダー育成講座に1期生として受講しました。その後東京文化会館のワークショップ・リーダーとなり、彼らとは6年以上の付き合いになります。

桜井:年に2回来日されるので、ついこの間の7月も来日されていて、その度に技術を学んでいます。

坂本:あとは結成したときに、東京音大がある豊島区の区民ひろばの所長さんがすごく応援して下さって。
「あなたたちの活動すごく良いからがんばれ!」と言っていただいて、区民ひろば南池袋の施設で乳幼児向けのワークショップを月1で開催させて頂きました。それが一番の学びというか、特訓の場所でした。

―毎月やられてたんですか!すごいですね
坂本:毎回25組ぐらいの親子が来て下さるんですね。そこでの経験が私たちの根源というか、私たちのやり方が生まれてきた場所だったんじゃないかな、と思います。

―毎月というと同じ内容になってしまうことはなかったんですか?
坂本桜井:はい。
坂本:毎月違う内容でした。
桜井:あれは本当に鍛えられましたね。
坂本:毎月、企画からはじめて、練習して、フィードバックも受けて、振り返りして…
―普段の勉強と並行ですもんね。
桜井:そうですね。お互い学生でしたので
坂本:はい、あとカーザ・ダ・ムジカの話に関しては、ポルトガルでの研修もさせて頂きました。
―ポルトガルでは、どういった勉強をされたんですか?
坂本:10日間ぐらい行きましたが、カーザ・ダ・ムジカの施設で毎日のように開催されているワークショップや参加型のコンサート。高齢者施設や、日常生活で問題を抱えてるような方に向けたワークショップを見て勉強するというのと、ポルトガルの子供たちを対象にしたワークショップを実施しました。
―語学は習得してから実施されたのですか?
坂本:いや、子供たちはポルトガル語しかわからないので、会話は難しいですね。私たちもポルトガル語は調べた必要最低限の言葉しか知りませんでしたが、音楽って言葉がなくてもコミュニケーションが取れるものなので、そこらへんは全く問題なかったですね!

―そうなんですね、言葉の壁を超えて通じ合える、音楽の魅力の一つですね!桜井さんはどういった学びをされてきましたか?

桜井:私も同じく大学までほとんどピアノを演奏することのみに集中してきた人生でしたが、仲道先生をきっかけに東京音大で坂本に出会い、おとみっくを結成してからはポルトガル以外にロンドンでも勉強しましたね。ロンドンのギルドホール音楽演劇学校には「リーダシップ科」というクリエイティブな活動ができるアーティストを育成する専科がありまして、そこが毎年2月にダイアローグ・プロジェクトという、大きいプロジェクトを約一週間実施するのですが、それに参加しました。大学の学生が中心となって、ホームレスや東ロンドンに住む移民の方々、地元の子供たち、若いプロフェッショナルなミュージシャンたちと一緒にゼロベースから音楽作品を作ったり、歌を歌ったり、即興演奏を楽しんで、最後に大学の大きなホールで発表するという、かなり壮大なプロジェクトです。

―さまざまな価値観の方と関わられてきたんですね。実際に音楽を通じて関わられて、どういったことを感じられてきましたか?

桜井:そうですね。ほとんどの人が音楽って「聴くもの」っていうイメージが強いと思うんですね、もちろん私もそう思っていたんですけど、音楽というものが様々な人達とコミュニケーションを取る際に、とても効果的な手法の一つなんだなってワークショップに出会って気が付きました。自分の音楽に対する価値観や可能性がすごく広がったなと感じます。そしてそれを、できれば一緒に仕事をしている音楽家や地域のホールの方、音楽に対して「聴く」「見る」ぐらいのイメージしかない人たちにも広めていきたいなという気持ちを持っております。

―「見る」「弾く」「聴く」以外にさらにどういった効果があると思っていらっしゃいますか?
桜井:そうですね、私の感覚では「触る」というイメージが強いです。音楽を体の奥底で感じた時って「聴いたなー」とか「感じたなー」とていうよりも、その音楽のそのものに「触れたな」というレベルまでに達していると思うんです。音楽だけではない、その背景にある文化や人の息遣いに触れるといいますか、、、

―かなり深いですね。
坂本:弾いてるわけでもなくて、聴かせてるわけでもなくて、一緒に音楽を共有しているかが大切だと思うんです。この曲を弾けば喜ぶでしょとかそういうことではなくて、どんな音楽も味わったから、お客さんの中にも残ると思うので、そういう風に音楽を楽しんでほしいなと思います。

一番印象に残っているワークショップ

坂本:(笑)それが、どれにしようかずっと話していて、、、
どれも印象に残っているんですよ。なぜかというと、私たちのワークショップって二度同じことは無いんですね。もちろんレパートリーとかはあったりするんですけど、その場の人たちによって、つくる音楽は変わってくるし、そもそも同じプログラムをまた違う場所でやることも少ないよね。
桜井:そうですね。
坂本:一番音楽と離れていて挑戦だったなと言うのと、製作期間が長かったという面で、東芝未来科学館さんで実施させていただいた、音楽ワークショップですかね。その時のテーマが「科学と音楽のコラボレーション」で、タイトルが「corocoro冬のメロディー」でした。下り坂の装置にまゆたまを転がすと、センサーが反応して音が鳴ったり、液晶の色が変わったりする装置を考案して、それを使って子供たちと音楽ワークショップ行いました。私たちも、科学について全然詳しくないので、どうやっていこうかと科学館さんの方々といろいろ悩みましたが、0から装置を考えワークショップを成功させ時は、音楽って色々なものとコラボレーションしたり、もっともっと様々な広がりができるなと思いました。そこでの経験は今でも生きていますね。

―なるほど、すごく面白い依頼ですね。科学と音楽の面でここ似てるなという部分ってありましたか?

桜井:ミッションが同じだなと思いました。私たちは、音楽ってもっと身近にあるものだよ、一緒に楽しもうよ!ということをできるだけ多くの人たちに伝えていきたいっていうミッションを持っていますが、それは科学の先生たちも同じでした。科学に魅了された一人として、科学をもっと身近に感じてほしいと、親子で楽しみながら科学に触れるという装置を作っていらっしゃいました。そういうところは同じだなと思いましたね。

過去に実践されたワークショップのなかで苦労したもの

桜井:苦労ではないんですけど、、予期せぬハプニングというのはつきものでして。
以前とあるご依頼で、45分間のワークショップの中で子供達と音楽を創作して、その作品をホールでお客様に発表するというワークショップを行いました。
打ち合わせでは、子供たちが使う楽器はご用意していただけるというお話だったのですが、、行ってみたら一つも楽器がなく、ワークショップのお部屋にはピアノすらなかったんです。
しかし、もちろん発表を控えてますし、ホールには子供達の親御さんやそのイベントを見に来てくださった方もたくさんいらっしゃるし、ピアノがない状況で作品を作らなきゃいけない、子供たちは楽器がない、どうする、、、?ということはありましたね。
坂本:でももう、「ないね、うん、とりあえずやろっか」という感じで慌てることなく冷静でしたね。
桜井:そうですね。結果その45分間は、ボディーパッカッションや歌を歌ったり、音楽を作る手法を使って、本番は即興でピアノに合わせてパフォーマンスするという形で実施しました。あれはかなりエキサイティングでした。

―楽器はどういったものを使う予定だったんですか
桜井:子供たちが使える小打楽器と呼ばれるような小さい楽器だったんですけど、まあ、なければないということで…ワークショップはそういう緊急事態も結構あるので、メンタルや臨機応変に対応する力は鍛えられるます。
坂本:それまでに楽器のないワークショップを経験してたりとか、引き出しが少しずつ生まれてきていたので、出来たのかなと思いますね。ワークショップに参加される方は毎回違うので同じ結果にはならない。AパターンだけでなくBパターン、Cパターン、Zパターン…いろいろ考えておくと、その人たちに1番合ったものができる。と私たちの先生もよく仰るのですが、私たちも常に様々なことを想定しているので、そんなに焦らずできました。

桜井:たくさんレパートリーがあるので…。例えば3つのプログラムを実施するけれども、予め6個7個ネタを考えておいて、当日の参加者の様子で選ぶいう、基本的にはそうですね。そうすると、その方々に適したプログラムをご提案できるので

―いろんな問題発生を想定したうえで、様々なパターンをかんがえられているんですね。

今後の展望や目標

桜井:そうですね。沢山あるのですが笑
ひとつは、ここ1年ぐらい後進のアーティスト育成に力を入れ始めました。現役の学生は特に進路や自分が音楽家として何ができるんだろう?と悩んでいる学生も多いので、この活動自体をもっと広め、「ワークショップ・アーティスト」という職業が音楽界で一つの生きる道として残っていけるような未来を作っていけたらなと思っています。そのためには、どんどん若い世代にこういう方法があるよ、こういうやり方があるんだよ、ということを教えていきたいな、広めていきたいな、と思っていて。

坂本:すごく大きな目標でいうと、音楽がもっと社会で役立つものになってほしいと思ってます。私たちが今までやってきたことは本当に限られたことではあるんですけど、音楽は様々な人とコミュニケーションを取ったり、何かの問題を解決するための手段の一つになると思います。そしてまずは、音楽家自身に「音楽が様々なことに役立つ」ということを知っていただきたいですね。 そんな音楽家が増えると、音楽が社会ともっと密接な関係になって行くと思うんです。

今回のコラボワークショップで力をいれていること

坂本:私たちは音楽を一方的に聴衆へ届けるものではなく、人との繋がりや何かを共有する最強コミュニケーションの一つであると思っています。演奏者の皆さんは普段から双方的な演奏や言葉を使わないコミュニケーションが自然と出来ている。そういうことを伝えられる技術があるっていうことをまず自覚して頂きたいです。そして、小さい頃から何十年も培ってきた自分の能力を多様に活用していただくための1つの方法として、私たちの手法をご紹介できたらと思っています。新しい方法を体験したことで、今までと違ったことをステージで挑戦してみようという気持ちになったり、演奏に対する姿勢に変化が生まれたりしたら嬉しいなと思っています。

―弊NPOも、音楽を通じて人と人が繋がり、共に楽しい時間を共有することができればと思い、訪問演奏活動を開始しました。ぜひ10月のワークショップで、おとみっくさんの様々な手法を体験して頂き、演奏の幅を広げていっていただきたいですね。

桜井:見てそのまま持って帰るのではなくて、「これいいな」と思った部分を、ぜひそれぞれの現場で生かしていってほしいと思ってます。

坂本:あとは自分の音楽を見つめ直す時間にもしていただけたらなと思っています。私たち自身ワークショップに出会って音楽の見え方がどんどん変わっていきました。自分自身も、一生懸命練習してミスなく自分の思った通りに演奏することが私のピアノと思っていたんですけど、それだけでなくて「人と人がつながるひとつの手段」だったりとか、「自分のやっていた音楽が何かの役に立つ」と気づいた時は、「音楽をやっていて本当によかったな」と音楽がかけがえのない愛おしいものになりました。

桜井:実際にワークショップをやって演奏がだいぶ変わったといわれました。

―音楽を通じて様々な人たちと関わられたことが、アイデンティティや自己革新につながったのですね。

坂本:そうですね。私昔はステージの上に立つのあまり好きではなくて、怖かったんですよ。でも最近音楽は、そこで生まれるものだから演奏する場に行かないと生まれないし、そこで何が起きても、それこそが音楽だからって前向きにステージに立てられるようになって、そういう意味でも演奏が変わったと思いますね。

―ありがとうございました。おとみっくさんがいろんなワークショップを通して学ばれてきたことを、ぜひコラボワークショップにご参加される皆様には体験していただき、ご自身の演奏に活かして頂けましたら幸いです。

取材・文 瀧本遥香 海山美玖