新井靖志さんを偲んで~トルヴェール・クヮルテットの思い出

日本を代表するサックスカルテットであるトルヴェール・クヮルテットのテナー奏者である新井靖志さんが、9月9日に脳出血のためお亡くなりになりました。51歳という若さでした。

トルヴェール・クヮルテットは、自分がサックスを始めた高校生の頃からサックス界の第一線で活躍しており、ずっと憧れ目標としていた団体です。コンサートにも何十回も足を運びました。トルヴェール・クヮルテットの演奏をもう聴けなくなってしまったことが本当に残念でなりません。

トルヴェール・クヮルテットの他の3人に比べると少々地味な印象だった新井さん(他の3人が派手すぎたこともありますが)。高校生の頃はアルトサックスしか吹いてなかったので、トルヴェールの演奏を聴いても「なんかテナーはモコモコした音してるな」という印象でしたが、大学生になっていざテナーを吹いてみることになって新井さんの偉大さを思い知りました。あんな柔らかい音は出せないし、周囲と溶け込むことがこんなにも難しいとは、と。以降、テナーサックスを吹く際には新井さんの音を目標とするようになりました。

その後もトルヴェールはずっと自分の目標でしたし、彼女(今の妻)との別れ話の後で一緒にトルヴェールのコンサートを聴きに行って復縁したのもよい思い出です。

2009年に新井さんが残念な事件を起こしてしまったことでトルヴェールの活動が停滞していた時期もありましたが、それでも自分の憧れ・目標であるという地位が揺らぐことはありませんでした。

トルヴェールのコンサートで最も印象に残っているのが、2007年に行われた結成20周年の3Daysコンサート。3日連続で聴きに行ったうえに、追加公演も聴きに行って4日間のトルヴェール漬け。その当時に別のブログに書いていた演奏会レポートをここに再掲し、トルヴェールおよび新井さんから頂いた感動を思い出しつつ、心からご冥福をお祈りいたします。

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2007/10/6 トルヴェールクヮルテット 結成20周年3daysコンサート 初日】

トルヴェールクヮルテット、結成20周年記念3daysコンサートの初日公演に行って
きました。

■プログラム
(プレコンサート)ラグタイム組曲

カインドオブガイーヌ
プレリュードとフーガ/メンデルスゾーン
四重奏曲/デザンクロ

トルヴェールの四季より春Ⅰ、Ⅱ 夏Ⅱ、Ⅲ 秋Ⅲ 冬Ⅱ、Ⅲ
ポギーとベス ハイライト

(アンコール)
ブエノスアイレスの四季より 冬
マイフェイバリットシングス

初日の今日は、トルヴェールの歴史を振り返る、記念碑的な曲が多く取り上げられました。

プレコンサートの「ラグタイム組曲」や本編で取り上げられたメンデルスゾーン、「ポギーとベス」などはデビュー当初に頻繁に演奏されたレパートリーとのこと。

トルヴェールの演奏会にはこれまで30回以上行っていると思いますが、これまで
生で聴く機会が無かったこれらの曲は非常に新鮮に聞こえました。
特に「ラグタイム組曲」は高校生の頃に初めて本格的にカルテットを組んで取り組んだ曲で(当時から参考にした音源はトルヴェールのCDでした)、この曲で3days
コンサートの幕が開けることに運命を感じずにはいられませんでした。

さすがに20年も組んでいるアンサンブルで、個々の技量に加えて素晴らしいアンサンブル力に脱帽しっぱなしの、1日目から大満足の内容でした(^-^)

唯一イチャモンつけるとすれば、プログラムの紙がやたらショボいこと。
色画用紙に文字だけが印刷されてるようなやつで、20周年なんだからもっと立派
なやつ作ればいいのに…と思ったり。

終演後のサイン会で、とうとう楽器ケースにサインもらっちゃいました。
これは家宝確定です(^-^)v

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2007/10/7 トルヴェールクヮルテット 結成20周年記念3daysコンサート 2日目】

トルヴェールクヮルテット、結成20周年記念3daysコンサートの二日日の公演に行
ってきました。

■プログラム
(プレコンサート)
セヴィリヤ
不覚にも曲名がわからなかった…どんぐりころころがテーマになってる曲

シャルウィーサックス
民謡風ロンド 序奏と変奏/ピエルネ
四重奏曲/シュミット

ナッチナッカー
トルヴェールの惑星より金星 木星 土星 彗星 天王星 地球

(アンコール)
やさいの歌
トルヴェールの四季より 夏Ⅲ

前半がサックスオリジナル曲、後半が長生淳氏によるトルヴェールのために書か
れた曲でした。

なんか昨日より調子あがってません?と思うほど素晴らしい演奏でした。
ピエルネやシュミットは久しぶりに聴きましたが、技量の高さを随所に感じるき
っちりとした曲づくり。

対して後半ははじけるところははじけまくりの、ノリノリのステージでした。

自分がトルヴェールの曲で一番好きなのが、本日演奏された惑星の中の「地球」
なんですが、CDともこれまで聴いた演奏とも違った曲作りで、すさまじい破壊力
だった。
ホント冗談抜きで泣きそうでした、自分(/_;)

「やさいの歌」は大笑いさせていただきました。

う~ん、2日連続でトルヴェールの音に酔いしれ、本当に幸せな気持ち☆
楽器吹きたくなってたまんないっす。

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【2007/10/8 トルヴェールクヮルテット 結成20周年記念3daysコンサート 3日目】

トルヴェールクヮルテット、結成20周年記念3daysコンサートの千秋楽公演に行ってきました。

■プログラム
(プレコンサート)
またもや不覚にも曲名がわからなかった…

マイフェイバリットシングス
Doo-Dah組曲/ホルコム
3つの即興曲/ウッズ
バークレースクエアのナイチンゲール
ミケランジェロ/ピアソラ
勝利/ピアソラ
ブエノスアイレスの夏/ピアソラ
ブエノスアイレスの冬/ピアソラ

モーツァルトはなべてこうしたもの
カルメンラプソディ

(アンコール)
トルヴェールの四季より 秋Ⅲ
日本の歌
G線上のアリア

最終日の今日は、定番の「マイフェイバリットシングス」やピアソラ、モツなべ・カルメンなどの長生作品といった、トルヴェールの十八番を集めたはっちゃけプログラムでした。

なので、曲中の演出などもふんだんに取り入れられていて、聴くだけでなく見るのも楽しいコンサートとなりました。
特に3daysの最終日ですから、演奏者のみならず観客もノリノリでそのパフォーマンスに応えていました。

司会も挟まずプログラム通りに淡々と曲が演奏されていくような純クラシックコンサートを思い描いていた人からは「演出でごまかして邪道だ」なんて言われるかもしれません。
しかし演奏技術の高さに加えて見た目にも楽しいっていうのは素晴らしいことだと思います。

逆にそういった演出があるからこそ、私はトルヴェールの演奏会には何度でも足を運びたくなってしまいます♪

コンサート冒頭、早くも感極まってしまった新井さんの涙でスタート。

相当難しいはずの「Doo-Dah組曲」をいとも簡単に演奏してしまう技術に圧倒され、「バークレースクエアのナイチンゲール」ではAATBの編成での非常に美しいハーモニーを堪能させて頂きました。

ピアソラ4連発は非常に熱のこもった演奏で、この時点で私は卒倒しそうでした。

そして後半のモツなべ&カルメン。ここはもうパフォーマンスも全開☆

カルメンのパフォーマンスの進化には驚いた。
この曲はトルヴェールのコンサートでしょっちゅう取り上げられてますが、パフォーマンスがどんどん加えられていってます。

ラストの「G線上のアリア」は演奏者も観客も泣いてる人多数。須川さんの男泣きには本当にやられそうになりましたが、なんとかこらえましたf(^^;)

この3日間、本当に幸せな時間を過ごす事が出来ました。
自分にとって一生忘れることのできない思い出になると思います。

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【2007/10/16 トルヴェールクヮルテット 結成20周年記念3daysコンサート 追加公演】

トルヴェールクヮルテット、結成20周年記念3daysコンサートの追加公演に行ってきました。

■プログラム
(プレコンサート)
Doo-Dah組曲 Ⅱ楽章
Doo-Dah組曲 Ⅲ楽章

カインドオブガイーヌ
四重奏曲/シュミット
四重奏曲/デザンクロ

モーツァルトはなべてこうしたもの
トルヴェールの惑星より「木星」
ブエノスアイレスの四季より「冬」
カルメンラプソディ

(アンコール)
日本の歌
バークレースクエアのナイチンゲール

3daysの興奮が抑えきれず、追加公演にも行ってきちゃいました。

会場は川口リリア音楽ホール。
このホール、奏者としても観客としても何度か訪れたことがあるのですが、ここでプロの演奏家のコンサートを聞くのは初めてだったように思います。

3daysのトッパンホールでは前から3列目ということもあって、かなり生音に近い状態で聞こえていたのが、ここでは客席が後方だったのもあって、サックス4本+ピアノの音がまとまった響きとなって自分の耳に届きました。

プログラムを見てビックリ仰天。
第一部でシュミットとデザンクロを連続でやるの!?
サックス吹きでもちょっと…と思うような、超ヘビーなプログラムに不安を抱きました。

本来は違う曲が予定されていたらしいのですが、3daysを終えて急遽プログラムの差し替えを行ったそうです。

しかしいざ聴いてみると、ピンと張り詰めた緊張感の中で、昼間の仕事の疲れが洗い流されていくような不思議な感覚に包まれました。
今まで見えてこなかった曲のパーツに気付いたり、複雑に絡み合うリズムの断片が見えたりもしました。

とは言ってもさすがに疲れましたんで、第2部では肩の力を抜いて楽しませて頂きました。

モツなべ、木星、ピアソラ、カルメンと、トルヴェールファンにはたまらない曲目ばかり。
相変わらずのぶっ飛んだ演出も繰り広げられ、客席も笑いにと拍手に包まれました。

夜公演のためかアンコールがかなりあっさり終わってしまったのがちょっと残念でしたが、またまた本当に楽しい時間を過ごすことができました。

これでしばらくトルヴェールを生で聴くことはできないのかなぁ、と思うと少々さみしさもありますが、今後もずっと自分の憧れの存在として活躍し続けて頂きたいと願うばかりです。

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