管楽器から飛沫は出ているの? – ヤマハの実験結果を読み解く

年間200件超の老人ホーム等への訪問コンサートをコーディネートする、NPO法人パフォーマンスバンク代表の鈴木です。

新型コロナウイルスの感染拡大防止に注意が欠かせない飛沫感染の防止。コンサートの場づくりはもちろん、楽団の練習再開ができるのか?といった観点でも非常に気になるポイントです。

クラシック音楽の界隈では
「弦楽器や打楽器は飛沫感染のリスクは少ないはず」
「声楽は飛沫感染リスク高いよね」
といった声が聞こえてきておりましたが、イマイチ謎だったのが管楽器。

息を入れて音を出す以上きっと飛沫も出るんだろうな、というのが一般的なイメージ。しかしながら、実際に管楽器を演奏したことがある人ならご存知の通り、管楽器は息がそのまま音として出ているわけではありません。息が音になるまでに途中でリードや唇の振動(=抵抗)が加わっていたり、管がグルグルと巻いてある楽器も少なく無いため、口からの飛沫がどのくらい外に出ているのかは憶測の域を出ませんでした。

それの答えを出すために大いに参考になりそうな情報として、昨日ヤマハから楽器の演奏時の飛沫の飛散状況を可視化する実験の結果が公開されました!!このような実験の実施や結果の公開、本当にありがたく思います。

目次

実験動画4本 – ヤマハミュージックジャパンより

現時点で以下4本が公開されています。

①実験概要

②発音源付近のズーム

③飛沫の距離

④飛沫の左右の広がり

③④の動画では、②で飛沫が確認された

  • くしゃみ
  • 発声
  • フルート
  • トランペットのマウスピースのみ

でのみ実感が行われています。

管楽器の中でも楽器によって飛沫の有無にかなり差がある

実験結果をピックアップすると

  • 管楽器は全般的に発声ほどの多くの飛沫は飛ばない
  • フルートはタンギングの際などに奏者の顔の正面に向かって少量の飛沫が発生する
  • 金管楽器演奏時は飛沫より小さな微粒子がわずかに発生
  • 金管楽器をマウスピースだけ演奏すると飛沫が発生
  • 金管楽器の水抜き(ツバ抜き)の際には飛沫が発生
  • リード楽器(この実験ではサックス)は飛沫の観測は無し

といった結果でした。つまり楽器演奏時の飛沫の量を見ると

発声 >>>>> フルート >> 金管楽器 > リード楽器

となります。

フルートは息の半分くらいが楽器の中に入らずそのまま外に出てしまうので、(発生に比べれば少量ではありますが)飛沫が発生してしまうのは致し方ないようです。

管楽器演奏において飛沫を防ぐための対策

上記を踏まえて、老人ホーム等への訪問演奏で管楽器を用いる際には、以下のような飛沫防止対策が必要ではないかと考えます。

※以下は今回の実験結果から読み取れる飛沫防止対策に限って言及していますので、一定時間ごとの会場の換気や、接触感染を防止するための対策も別途必要となることにご注意ください

①ステージと客席の距離は1.5m以上の間隔を取る

今回の実験で最も遠くまで飛沫が届いたのが「くしゃみをした時の1m以上」という観測。逆に言えば、その他の管楽器の演奏の際にはそれを超える結果は見られませんでしたので、ステージと客席との距離は1.5m以上の距離を空ければ、飛沫防止の観点では十分と言えるでしょう。

もちろん、奏者同士・客席同士の距離も同程度の感覚を確保するよう努めなくてはなりません。

②司会時のマスク着用

この対策は管楽器奏者だけに限りませんが、曲間の司会を行う際には都度マスクを着用することが効果的であると考えられます。

実験映像を見ると、声を出すときの飛沫は管楽器を演奏する際の比にならないほどの量でした。またそれと同時に、マスク着用は発生時の飛沫予防に大きな効果があることも分かります。

③ウォーミングアップ/片付け時にこそ飛沫防止を

今回の実験で注目すべきは

  • 金管楽器をマウスピースだけ演奏すると飛沫が発生
  • 金管楽器の水抜き(ツバ抜き)の際には飛沫が発生

という点。

つまり楽器をきちんと組み立てて演奏する時よりも、ウォーミングアップや片付けの時の方が飛沫発生のリスクが大きいということです。これを防ぐためには

  • マウスピースだけを使ったウォーミングアップは屋外で
  • 人が近くにいる場所で水抜き(ツバ抜き)をしない

といった飛沫防止対策を行う必要があります(個人的には「そもそもマウスピースだけ練習って意味あるの?」ということを見直すのもオススメしたい)。

また、今回の実験では言及されていませんが、木管楽器のお手入れに使うスワブについても、他の人のものを触らない(そもそも触りたくないでしょうが…)・こまめに洗う、などの対策を行うのが良いでしょう。

④フルートは演奏時にフェイスシールドを装着?

フルートは飛沫は発生するものの、今回の実験結果を見る限りでは①〜③の対策で十分なのではないかと考えられます。

しかしながら、他の管楽器と比較して飛沫量が多いのは事実なので、フルートに限ってはフェイスシールドを装着しての演奏が必要となるケースがあるかも知れません。

そもそもフェイスシールドしてフルート吹けるのか?と思っていたら、既にトライしている方がいらっしゃいました。これは演奏時の負担も少なそうです。

生演奏を呼んでみませんか?

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パフォーマンスバンクではコロナ禍においても音楽の灯をを絶やさぬよう、引き続き様々な場所への生演奏による出張コンサートをお届けしています。


基本的な感染症対策に加え、演奏者と観客との距離を十分に確保することで、安心安全なコンサートを開催することができます。


また、ご要望に応じて、飛沫リスクの少ない弦楽器や打楽器などのコンサートもご提案させて頂いております。


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