日本ファンドレイジング協会アートチャプターが主催するセミナーに参加してきました。
全体を通しての大きなテーマは
『アートの価値ってなんなの?』
というもの。
日頃から「音楽で食っていくのは難しい」といった悩みに対峙している身としては、大変興味深い内容でした。
また、こういった大きなテーマについて思考することで、日々の活動に邁進している中で視野が近視眼的になってしまっていたことを反省する良い機会にもなりました。
今回のセミナーでの学び/ 気付きは
①アートそのものの価値を考えて言語化せよ
②助成する側も「人」である
③アーティストは政治に無関心ではいけない
の3つ。以下にセミナー内容の振り返りとともに、それぞれの内容を綴ります。
【第一部:片山正夫さん(セゾン文化財団常務理事)講演】
NPO法人という立場では、助成といえば”してもらう”ものですが、今回の後援会では助成を”する”立場からのお話を聞くことができて、大変多くの学びがありました。
・助成は寄付の特殊型であり、出し手がミッションを持っている
・企業メセナは”in-kind”に妙がある
・価値創造への個人寄付のキーワードは「愛情」「存続」「成長」
などなど。
特に考えさせられたのが、途中で出た「複合型メセナ」の話。
企業はアートにはお金を出さないけど「まちづくり」や「教育」などを絡めるとぐっとハードルが下がる。なので「アート×まちづくり」といった論調での活動が広がっているが、それはアートの本質的な価値をきちんと言語化できていないのではないか?さらに、この流れが強くなればなるほど、社会の役に立たない(=掛け算ができない)アートになど支援は必要ないといった話にならないか?
最近はまさに複合型で音楽を考えることが多くなっていましたが、純粋な「音楽」の価値とは何なのかを今一度きちんと突き詰めなければならないと思います。。
また、もう一つ印象的だったのが「助成する側も人である」という言葉。
助成する側も支援するからにはお金をはじめとするリソースを大事に使ってもらいたいと願っていて、得体の知れない団体/活動にお金を出すのは大きな恐怖が伴う。本当はその団体の「人」を見ることで信頼できるかどうかを判断したい。
だからこそ、助成に際して代表者が実際に会いに来てくれたりするのは、助成する側にとってもありがたいというのは目から鱗でした。
【第二部:ワールドカフェ】
後半はワールドカフェ形式で、参加者同士の議論を通じてそれぞれの考えを深める時間が設けられました。
ワールドカフェで投げ込まれたテーマは以下のようなもの。
・前のセッションでの気付きは?
・あなたがアートを強く意識しはじめた瞬間は?
・アートとお金と聞いたときのイメージは?それって本当?
自分が参加したテーブルで出た議論で興味深かったのは「アートは結果(作品や公演)だけではなく、それが誕生するプロセスや事後のコミュニケーションにも価値があるのではないか」や「アーティスト自身が価値を説明できるようにならなければいけないのでは」といった話。
しかし一番考えさせられたのは「結局アートでどうやってマネタイズするの?」ということ。
この手の話題になると「芸術の価値をわかる人が少ないのがダメだ」みたいな話になりがちなのですが、今回は前半の講演会で視野が広げられていたのもあってか
・芸術の受け手を育てる教育が必要
・学校教育では芸術の制作ばかり取り組むが、芸術を理解するためにはもっと鑑賞に取り組むことが必要
・教育となると国単位で取り組まなければならない
・そういえば日本という国が芸術をどう捉えていて、どんな方向に進めたいと思ってるのかよく分からない
・文化庁などが出す方針を理解し、そこに提言をしていくようなこともアーティストの使命なのではないか
といった建設的な意見が多く挙がり、新しい気付きがたくさんありました。
音楽と政治なんて関係無いと思っていましたが、特に文化庁の出す情報などにはきちんと関心を持ったうえで、それに対して意見を発信していくような取り組みも、アート分野に関わる団体としては意識していかなければならないと思いました。
↓はワールドカフェでのわが領土(?)におけるメモ。